本題に入る前に、Director of National Intelligenceはご存知でしょうか。これ、アメリカ政府の諜報・情報機関である国家インテリジェンス評議会のことです。
ここが、「Global Trend2030」というレポートを公表しています。私がメルマガを発行していた2014年6月に既に取り上げていましたが、2030年が10年後に迫ってきたので改めて書いておきたいと思います。
まず、レポートについては米国内はもとより20か国もの政府、財界、大学、シンクタンクなどからも広く意見聴取しているようです。巻末に、米国、欧州、中国、中近東などの人名・機関名が記載されているのですが、残念ながら日本人や日本の機関の名前は一切出てきません。米国の犬である日本からは、独自の視点が生まれないということでしょう。米国がそう思っているのですから、間違いありません。
さて、本題へ。
このレポートの中で、4つの基本潮流(基本的に変わりないこと)と、6つの不確定要素(今後どのようになるか分からないもの)をピックアップしています。少し要約します。
✅基本潮流
1.個人のエンパワメント(individual empowerment):
貧困削減により世界人口の過半が貧困脱却、各国とも中間層が拡大、教育の普及、ICTの普及、保健の進歩。これらにより、個人の能力向上が加速する。
2.国家の力の分散(diffusion of power):
覇権国の不在、多極化世界の中の多層的ネットワークに権力がシフト
3.人口パターンの影響(demography):
世界人口83億人(2030年。71億人:2012年)、平均寿命の延び、高齢化先進国の成長低化、若年層の多さが社会不安定化要因に(アフリカ、南アジア)、都市化の進展、移民の増加
4.食糧、水、エネルギーの連関増大(energy, water, food nexus):
世界人口増加に伴い、食糧、水、エネルギー需要増、供給不足深刻化
✅不確定要素
1.危機に陥り易い世界経済(Crisis-Prone Global Economy):
世界経済の不安定、不均衡が世界経済崩壊を招くか、あるいは、多極化が世界経済体制を強靭化するか?先進国の課題は高齢化。中国、インドにとっての課題は「中所得国の罠」
2.ガバナンス・ギャップ(Governance Gap):
急速な社会変動に現在の(国家、国際機関の)ガバナンスの形がついて行けるか?そのような中で大都市、地域共同体の存在感が上昇。ICTは国家による市民監視にも効果的であり両刃の刃ともなりうる。
3.国内・地域紛争の増加(Potential for Increased Conflicts):
資源を巡り、また、若年男性を多く抱える国(サブサハラ、南アジア、中東の一部)で紛争がぼっ発する可能性が高まる。中東は民主化に伴い最も不安定な地域であることに変わらず。アジア、中東地域における紛争で核の使用が検討される可能性あり。
4.地域的不安定(Wider Scope of Regional Instability):
中東、南アジアは未だに有効な地域安全保障のための枠組みを編み出しておらず、地域紛争の影響がグローバルに波及するおそれがある。
5.新技術のインパクト(Impact of New Technologies):
新発明が生産性向上、人口増加、急速な都市化、気候変動への対処に間に合うか?
6.米国の役割(Role of the United States):
米国は「幾つかの列強の中の一番の大国」(”first among equals”)としての地位を占め続けるが、従来のような米国一極時代は終わる。そのような中で米国は世界をリードし続けることができるか?
これらの基本潮流4×不確定要素6から、想定されるシナリオが4つ、記載されています。
✅想定シナリオ
1.融合(Fusion):
米国と中国の融合。様々な分野で米中が協調し合うことがベスト・シナリオとして明示されている。
2.非国家組織が活躍する世界(Nonstate World):
国家の問題解決意欲と能力の欠如に対応して、新技術や教育などによってエンパワーされた個人や組織が、ネットワークを駆使して国家に代わってあるいは協働してグローバルな問題に取り組む世界。反社会的な個人や非国家組織もエンパワーされうることがリスク。
3.格差社会、分断社会の蔓延(Gini Out of the Bottle):
国家間、国家内格差の拡大。紛争の可能性増大。破綻国家の増大。米国は世界の警察官の役割を担いきれず。
4.失速世界(Stalled Engines):
米国と欧州は世界の指導者としての役割を担うことを放棄。途上国では、腐敗、社会不安、脆弱な金融制度、慢性的なインフラの未整備、これらが相まって低成長が常態化する。途上国でパンデミックがブレークアウトするが国際社会はその拡大を止められず、先進国は途上国との接触を遮断、世界経済は低迷。
このレポートがまとめられた時から既に、米中の融合がベストシナリオとされています。がしかし、今の米国の態度はどうでしょうか。自ら紛争をばら撒き、覇権国家としての地位を誇示・維持しようとし続けています。これは結果的にシナリオ3に向かいかねない。
そもそも警察は、事件がないと発動できないわけです。世界警察たる米国も、力を誇示するには紛争がなければならない。となると、最も力を誇示するためには、最も勢いのある場所で紛争を起こすのがコスパが良い。消防署と放火魔が組むようなものです。
レポートの中、ベストシナリオが実現する架空のストーリーも掲載されています。
インドとパキスタンの間の緊張が高まり一触即発の事態に発展する。そこで主要な列強が問題解決のために積極的に介入し始める。その中で中国の活躍が飛びぬけていた。中国はワシントンに密使を派遣し、停戦協定案を詰め、米中はこれを国連安保理に共同提案する。中国はパキスタンへの巨額の援助を約束しパキスタンの暴走を抑える。一方、米国と欧州は協調してインドに経済制裁をちらつかせ国境からの兵力撤退を実現させる。停戦合意に留まらず、米中は今回の事案をカシミール問題の根本解決合意まで持ち込む。誰しも長年の懸案がかくも見事に解消するとは予想だにしていなかったが、米中両首脳の個人的な信頼関係に負うところが多いとされた。米中両首脳の外交努力は国際社会から大いに評価され、揃ってノーベル平和賞を受賞する。
今、緊張が高まっているのはアジアではミャンマーということになるでしょうか。個人的には、米国による北京五輪ボイコットは中国の報復措置に繋がると思います。これを解決出来るのは、日本だけ。
日本が外交力を発揮し、中国と米国のバランサーとして存在する。そんなリーダーシップがあれば良いのですが…残念ながら(以下自主規制)。
米国の犬と思われている現状を打破する気概ある政治家の出現は、ちょっと難しい。裏でバランサーをしている二階さんの後釜もいない…オワッタ。
日本語翻訳は、海上自衛隊幹部学校のWebサイトに掲載されていますので、ご覧ください。なぜ海上自衛隊幹部学校か?前述の通りでございます。
最後に、面白い記事をご紹介。
これに関連してもう1つ、記事に書かれてない秘話を。
1945年4月、皇后陛下名義で1,000万スイスフラン
これは現在の時価にすると
つまり、4月には日本の敗戦が「確定」していたとい
ちなみに当該文書のコピーが欲しい場合は、下記の英国National Archivesから申請出来ますのでご参考まで。
http://discovery.nationalarchi
日本で一番「高貴」なはずの天皇一族でさえ、多くの人命が
名誉総裁が皇后陛下であり、名誉副総裁が秋篠宮皇嗣妃殿下、常陸宮殿下・同妃殿下、三笠宮妃殿下、寬仁親王妃信子殿下、高円宮妃殿下です。
これ以上は書けませんので、このあたりでやめておきます。