2019年12月中旬から下旬にかけて、四川省彭州市（ほうしゅうし）を訪ねていました。新型コロナウイルスが蔓延する直前でしたが、本当に実りの多い訪中の１つでした。
彭州市
彭州市は四川省成都市に位置する県級市。2008年5月12日に発生した四川大地震（da dizhen）では橋の崩落などにより10万人が孤立したと言われています。福島出身の私は勝手に親近感のようなものを抱きました。人口は約80万人、北海道石狩市と姉妹都市提携をしています。
市政府の所在地、天彭鎮は古い蜀文化の中心地の1つとして“天府金盆”（土地が肥沃で資源が豊かなところ）、“蜀漢名区”（四川省の名所）と讃えられています。
また、「成都市北郊の資源の宝庫」、「近代的な医薬産業の故郷」、「石油化学工業の新興都市」、「“第11次五カ年計画”の中等都市」、「休日レジャーの地」という5つの要素で概括できるとのこと。
目的
彭州市を訪れた目的は、詳細までは書けないので割愛しますが、四川省で育てられている生薬がどのように管理されているかを見て回っていました。この生薬の効能を全てデータベース化して、AIを活用し、完全カスタマイズ型の調合が出来たら素晴らしいと思っていました。
少し話が逸れますが、健康も医療も近い将来必ず「カスタマイズ化」されます。その前提として、医療・健康データを個人のアセット（資産）として個人が持たなければなりません。日本は特にそうなのですが、ここが解決しない限りは本当の意味でのカスタマイズ化は実現出来ません。
※今、ブロックチェーン技術でこれを解決しようとしてます。お楽しみに。
私はその「カスタマイズ化」を実現できる素地は中国にあると思っていまして、彭州市政府を訪れ、どのように生薬が管理されているのかを調べに行ったのです。
中医のクオリティ
中国語で「中药」とはいわゆる漢方薬のことです。彭州市が管理している１つの農地に案内して頂きました。
下記のように、産官学が一体となって生産から品質管理までをマネジメント出来る仕組みがあります。現地の方のお話では、生産量まで定められているとのこと。さらに、漢方のグレードや採取量に応じて、政府が価格設定管理をしているようです。また、投資会社から資金を得て、産業としてしっかり保護しながら育てていこうとしているのが分かります。
ヒストリーについても、施設の壁面に掲示されていました。
その後、政府施設内に移動してプレゼンを聞きましたが、豊かな自然と豊かな水が育む最高の土地だというのが分かりました。
というのも、市の西側には最高峰4,984mの龍門山脈（中国語：龙门山）が位置し、南西部はチベットまで繋がっています。ここに降る雪が溶けて雪解け水となり、大地に注ぐ。そのおかげもあり、非常に肥沃な土地の上で生薬の栽培が行われいるのです。
また話が脱線してしまうのですが、伝説では龍門山の北の汶山・石紐（現在の北川羌族自治県）が禹の誕生の地とされています。この禹については、日本の龍神信仰と関わりがあると思っていまして、誕生の地が龍門山であるということとただならぬ関係を感じるわけです。
禹についてはここでは割愛しますが、ご興味がある方は下記をご覧ください。
※日本にも龍門山という山が和歌山県にあります。
果てしなく脱線する自信がフツフツと湧いてきてしまいましたが、話を戻しましょう。
下記は、彭州市下泉村で栽培されている川芎（センキュウ、ChuanXiong, 英名：Cnidium officinale）と呼ばれる植物です。日本では北海道でも栽培されるようです。
様々な種類の川芎が漢方になっていました。
これは本草綱目です。私が欲しかったものです。川芎も掲載されています。
日本で発展しきれなかった中医
日本では慶長12年（1607年）、林羅山が長崎で本草綱目を入手し、駿府に滞在していた徳川家康に献上したそうです。これを基に家康が本格的に本草研究を進める契機となり、日本での翻訳も進みました。
ただ、日本では医学として発展しきれなかったように思います。既存の漢方薬を売って終わり…漢方薬も効いたり効かなかったり…そんな印象を持っている方が多いのではないでしょうか。
中国では色んなヘルスケアアプリが登場し、登録者数もかなり多い中、中医が医療サービスの１つとして西洋医学と同じプラットフォームで提供されているほど。
下記はテンセントが買収したWeDoctor（微医）での画面です。中医のサービスをユーザーが選択して受けることが出来ます。
新型コロナウイルスにも効果
現在日本では、なぜ中国が新型コロナウイルスの拡大・死亡者を低く抑えられているかが、まともに議論されていません。中国が14億人という人口規模であるのに、ここまでパンデミックを引き起こさずに国家運営が出来ていることは、良い意味で驚異的です。
スペイン風邪の発生源が実は米国だったということもあるので、そもそも発生源を云々議論することはさほど意味がありません。適応できる者が生き残ってきたのが人類史だとすれば、中国が取り組んでいることを絶対学ぶべきです。
それをせずして、対中脅威論・対露脅威論を展開し、いたずらに自国の死者を増やしている国はまともとは思えません。どの国が…とは言いませんが、代表的な国は誰が見ても明らか。なんと86万人も亡くなっていて、トランプ大統領時代よりバイデン大統領時代のほうが死者が増えてしまいました。
米国批判はさておき、日本でも議論されていない１つに、私は中医の存在があると確信しています。例えば生薬１つにしても、これだけの効果が出ています。
＜清肺排毒湯の有効性＞
注目すべき点は、投与開始 3 日後に 30%の症例で咳嗽が消失していること、86.6％が解熱していることで、この報告からは、迅速な効果があったと考えられます。
中華人民共和国国家衛生健康委員会の発表でも、COVID-19 に対する清肺排毒湯の効果的な治癒率は90％以上です。
これは、日本感染症学会に寄稿した、小川恵子先生（金沢大学附属病院漢方医学科）の資料から引用させて頂きました。もっと知るべきことがありますし、もっと対応の仕方があるのです。
1点注意すべきは、西洋医学か中医学かという極論に走っては駄目だということ。これは中国では当然の考え方で、両方の良いところをブレンドすると効果が高まるのです。これを中西医結合（中医学と現代医学治療の併用のこと）と呼んでいるのですが、日本でも絶対に取り入れるべき治療法です。
新型コロナウイルスだけでなく、例えば乳がんに関しても、この中西医結合で浸潤を妨げる方法が存在しています。驚くなかれ、知っている人は知っているのです。知らない人は「自分が知らない」ことを知らないのです。
日米メディアの中国叩きに付き合って生きるほど、無駄な人生はありません。完璧な国など存在しないわけですから、その国の良いところを積極的に学ぶ姿勢を失ってはならない。それを言うのは簡単ですが、実際に足を運んで自ら確かめることで、人生の価値は飛躍的に増大すると信じています。私がそうしたように、多くに日本人がそうあって欲しいと願っています。
善悪二元論は争いしか生みません。これは歴史が証明してきました。それを繰り返しているのが欧米諸国だということを肝に銘じ、限りある人生を豊かにしていきましょう。
最後に
彭州市で食べた四川料理が、人生で最も感動しましたので動画でご紹介。この豪華さ、美しさ、言葉がありませんでした。
こちらは招待された身。こまでおもてなしをしてくださった現地の政府関係者の皆様に、心から感謝した夜でした。「食」も仕事のうち。でも、アルコールを卒業した後だったので、お酒は断ってしまってスミマセン・・・という感じでした。
※私の代わりに？現地のパートナー企業の方がたくさん飲みました。
