ZUUMA|直感投資と戯言

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中国|中国共産党が「悪」だという時代遅れの善悪二元論を捨てる時

今日は、日本人が勘違いしやすい2つの「見解」について。

 

1つは、中国共産党は悪だという見解。もう1つは、米国による戦争は正義だという見解。これらは善悪二元論として感情的に論じられる場合が多く、また、正確に伝わっていない部分もかなり多いと思っています。

 

私自身、米国で事業を営んだ経験もありますし(テキサス州プレイノ)、中国には地方政府からの招待で事業策定のため4年間通い続けました(主に北京・上海・成都・青島・深セン)。米中どちらの事情も、ある程度は知っているつもりです。

 

私の個人的な見解は過去記事をご覧頂くとして、日本のくだらないメディアやテレビに登場しまくるヤラセ識者ではない識者がどう考えているのかを紹介しながら、見ていきたいと思います。

 

中国共産党の独裁は悪?

日本の政治家やメディアがいけない部分もあるのですが、多くの日本人は中国共産党の一党独裁が「悪」というイメージを持っています。そもそも「独裁」と呼んで良いのでしょうか。政府への信頼度が民主主義国家よりも高い中国で、本当に「独裁」だと思っている中国人がいるのでしょうか。

 

これは民主主義が正義で、共産主義が悪という、善悪二元論でしか世の中を見ることが出来ない盲目の人たちの理論です。

 

まずご紹介するのは、ロシアについても造詣が深い、元外務省主任分析官の佐藤優氏。中国が「別の理想型」として存在していることを述べています。

 

少し前まではアメリカや日本に追いつこうとしているに過ぎないと思われていた中国が、いわば「別の理想型」として勃興している。それが奇しくも見える化したのは、新型コロナウイルスのパンデミックだと思います。(中略)そんな中、中国は厳しい監視体制を敷いて初期の感染拡大をいち早く封じ込め、経済成長率も2.4%にまで回復させた。今まではカントリーリスクが大きいと思われていた中国のような国が、というのが注目すべき点です。これは従来のグローバル経済とは違う、中国を1つの極とする多極化の時代の到来と見ていいでしょう。

Source:

「欧米諸国からの抜け駆けを始めている」佐藤優が日本の外交に見る"異常" 中国の存在を強く意識した結果 | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

 

次に、拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏のコラム。少し引用が長くなりますが、大変核心を突いた内容なのでご了承ください。

 

そもそも中国の民主とは何なのか。日本人は中国の社会体制について「普通選挙がない」「言論の自由がない」「少数民族を弾圧している」から、民主国家ではないと難詰する。しかし、中国の民主とは乱暴にいえば生存の保障である。まずは皆が生きられる社会の実現が大切で、それがすべてに優先されるのである。

中国革命のベースは日本や欧米の侵略への怒りだが、共産党はそこで虐げられた小作農を地主や資本家から開放する闘いを展開し、最終的に民意の獲得に成功し国民党との内戦にも勝利した。これが彼らの勝ち得た民主だ。

自らの不完全性を認めたうえで、中国ならではの民主に自信を深めているのは、その機能性のためだ。日本を含む西側諸国では、誰であっても立候補できるのが民主的な選挙だと考える。批判勢力が立候補できないのは後進性の証左となるが、中国では逆に「誰でも立候補できる選挙で本当に民意はくみ上げられるのか」と考える。

つまり、さまざまな政策に通じているわけではない大衆が社会の空気に流されて行う選択と、1つの政策を決定するまで末端に始まり数十あるいは100を超える専門家による会議を開くやり方とでは、どちらが優れているかと問うているのだ。(中略)隣で確実に実績を残そうとしている国がすさまじい勢いでトライ・アンド・エラーを繰り返しているときに、「人権がない」「文化大革命だ」と自らの価値基準だけに頼って笑うことが賢い国の対応だろうか。

Source:『中国が「民主」に自信を深める訳」富坂聰氏/東洋経済』より

 

富坂氏のコラムはこちらでバックナンバーを読むことが出来ます。

 

中国式の民主主義が「別の理想型」として結果を残していることは、認めなければなりません。何も民主主義は米国の専売特許でもなんでも無いですし、色んな形の統べ方があっても良い。その統べ方は、各国それぞれ異なるのであって、そこで暮らす人々が生命が保障されて幸せであれば良い。そんなことが伝わってきます。(新型コロナウイルスで90万人の死者を出している国は、果たして生命や人権が保障されている国なのでしょうか?)

 

米国の戦争は正義?

次に、米国が引き起こしてきた戦争の歴史について。多くの日本人は米国が「世界の警察」だと思っていますが、果たしてこれらの戦争は正義だったのでしょうか。

 

米国人の歴史学者ジョン・ダワーの著書を紹介します。

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MIT名誉教授であるジョンは、ハーバード大で博士号を取得した日本近代史・日米関係史の専門家です。これについては、東洋経済に掲載されたブックレビューをそのまま引用させてください。

 

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 「歴史への無知が政策の失敗だけでなく、何十万人もの死をもたらす」

 

「米国の違法な占領政策」と言い切っていますね。米国政府は「米国こそが正義」というハリウッドピープルです。敵を作っては制裁や戦争を仕掛け、メディアは「作られた民意」を煽り続けて国民を洗脳します。

 

ロシア侵攻も、米国内では「既成事実化」が始まっています。

 

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Source:

米ブルームバーグ通信、サイトで誤報…見出しで「露がウクライナに侵攻」(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース

 

これは単なるミスではなく、メディアが深く関わる「根深い戦争文化」であることが、前述の著書から分かると思います。そのメディアの傘下にいるのが、日本という国です。

 

対立ではなく協調を進める中国

素晴らしい開会式を飾った北京五輪が開催中ですが、そんな中、習近平や王毅外相は精力的に要人と会談を開いています。

 

<2月4日>

タイ・シリントーン王女|実務的な協力強化
ロシア・プーチン大統領中露共同声明

 

<2月5日>

エジプト|シーシー大統領|互恵協力
カザフスタン|トカエフ大統領|一帯一路、両国間協力
セルビア|ブチッチ大統領|一帯一路、鉄道、国際秩序
トルクメニスタン|ベルディムハメドフ大統領|天然ガス、相互交流
ウズベキスタン|ミルジヨエフ大統領|戦略的協力、再生可能エネルギー
エクアドル|ラッソ大統領|全面的戦略パートナーシップ
カタール|タミム・ビン・ハマド・サーニ首長|協力強化
国連|グテーレス事務局長|国際システムの改革を中国に期待

 

<2月6日>

シンガポール|ハリマ大統領|ハイレベルな関係強化
エクアドル|アルシーヴァ大統領夫人|文化交流(彭麗媛夫人)
パキスタン|イムラン・カーン首相|CPEC、相互協力
ポーランド|ドゥタ大統領|支援、経済協力
アルゼンチン|フェルナンド大統領|包括的戦略パートナーシップ、1つの中国
モンゴル|オユーンエルデネ首相|戦略的パートナーシップ
ルクセンブルク|アンリ大公|空中シルクロード、一帯一路
モナコ|アルベール2世|5Gインフラ、協力関係の深化

 

(2月6日まで)

 

少なくとも25か国以上の政府要人が北京五輪のために訪中しています。中国政府はおそらく全員と会うでしょうね。そして米国のように制裁や戦争で同盟強化を訴えることは一度も無いでしょう。経済協力、相互発展のために、五輪後は習近平や王毅が参加国を訪問することになると思います。

 

争い事で平和を構築することは出来ません。

 

予想通り、外交的ボイコットをした国々はアングロ・サクソン同盟国だけで少数に留まりました。また、東京五輪への首脳級の来日が15人程度でしたので、外交的ボイコットされたのは実は日本の方だったのではないでしょうか。

 

www.asahi.com

実際に東京五輪で菅首相が会談した要人は、下記の12人です。

 

南スーダン|ニャンデン副大統領
UNHCR|グランディ難民高等弁務官
WHO|TEDロス事務局長
モンゴル|オユーンエルデネ首相
米国|ジル・バイデン大統領夫人
トルクメニスタン|ベルドイムハメドフ副首相
モンテネグロ|クリボカピッチ首相
ポーランド|ドゥダ大統領
コソボ|オスマニサドリウ大統領
スイス|パルムラン大統領兼経済・教育・研究相
アルメニア|サルキシャン大統領
フランス|マクロン大統領

 

中国は既にこの数を上回っています。もちろん単純比較は出来ませんが、まだ新型コロナウイルスの蔓延が世界的に収まったとは言えない状況であることは一緒です。言葉は悪いのですが、日本に来日したメンツの寂しさしか目立ちません…

 

そんな日本は、中国にお祝いにも行かず反中決議をしてしまったことは、外交的には致命的なミスです。どうしようもない。世界の潮流に加わることも出来ず、「少数派」として孤立していく運命かもしれません。

 

NATOの内部崩壊も近いのかもしれません。

 

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Source:

「西側は何の貢献もしていない」 トルコが批判、NATOで温度差:朝日新聞デジタル

 

いたずらに戦争を煽る米国は、NATOの勢力拡大にやっきになっていますが、完全に時代遅れになっていることをエルドアン大統領が見抜いています。宗教的にも民族的にもトルコが担う役割は大きく、トルコが米国と距離を取ることになると、困るのは米国です。

 

パワーバランスが崩れかけているのを、日本政府や日本のメディアは全く感知していないようにも思えます。日本人としてはこのあたりをフラットに見て、善悪二元論に加担せずに情報収集したいところですね。

 

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