ZUUMA|直感投資と戯言

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コラム|大英帝国の光と影(2)

今回は前回の記事に続き、イギリスの帝国主義について、特に亡くなったエリ女(二世、以下エリ女と書きます)の資金と奴隷制度ついて書きたいと思います。

 

下記は前回の記事です。

investmax.hatenablog.com

 

アヘン戦争後の香港

前回の記事で書いたアヘン戦争は、エリ女と直接の関係はありません。

 

ただし、香港の歴史、特に金融の歴史を語る上では外せません。なぜなら、中国に侵攻し香港を奪ったイギリスが香港に設立した銀行がHSBC(本社はロンドン)であり、HSBCを通じて本国イギリスに巨大なマネーを循環させたのです。後に設立されるスタンダードチャータード銀行と合わせ、民間の銀行が香港ドル紙幣発行を担いました。

 

紙幣に印刷されたのは、エリ女。世界中に植民地を作り、税金が課されないタックスヘイブンを作り、在位期間中の70年間(植民地時代の後期)で思う存分搾取しまくった…と言ったら誰かに怒られそうです。

 

ただ、それも言い過ぎというわけでもなく、イギリスは世界中に植民地を獲得していました。侵略、内政干渉しまくり。

繰り返しになりますが、香港は世界の主要な金融センターになる英国の最後の重要な植民地の1つでした。今でも未練タラタラなのは、誰もが知るところでしょう。

 

 

エリ女と王室の資産

エリ女の純資産は4億4292万米ドル(約633億2500万円・2022年9月17日の為替レート)。彼女の財産と資産は、息子のチャールズ3世に受け継がれます。

The Sunday Timesの2016年の推定によると、彼女の純資産は「王室の他のメンバーよりも圧倒的に多い 」とのことです。確かに、一国の主がどのようにして633億円もの大金を手に入れたのでしょうか。彼女は偉大なる経営者だったのでしょうか。公国からの収入があるのは理解しますが…

 

そこで、王室のFinancial Reportを見てみることにしました。なんと、総ページ数116ページものAnnual Reportです。ただ、結論から書きますが、これを読んでも何も分かりませんでした。王室の資金の詳細は完全にブラックボックスで、故フィリップ王子の遺言は90年間も封印されることが決定しています。

 

Forbesによると、王室は「Firm」と呼ばれる管理会社を通じて、280億ドル近い資産を保有している。これらの資産には、195億ドル相当の王室不動産、推定49億ドル相当のバッキンガム宮殿、13億ドル相当のコーンウォール公国、7億4800万ドル相当のランカスター公国、推定6億3000万ドル相当のケンジントン宮殿、5億9200万ドル相当のスコットランド王室不動産(いずれも米ドルベース)が含まれています。

 

以前、ケイマンに保管されている1,300万ドルのオフショア資金がリークされましたが、ほんの一部でしょう。

(Source:Queen Elizabeth II | ICIJ Offshore Leaks Database

 

アンドリュー王子とジェフリー・エプスタインの件についても、完全に忘れ去られてしまいました。きっと資金だけではなく、王室に関するスキャンダルは全て隠さなければならないのだと思います。

 

搾取してきたイギリス~奴隷制

公文書からは、王室の資金の詳細に迫れませんでした。話を少し戻し、イギリスが他国から搾取してきた歴史について現在の他国の反応について見てみます。

 

奴隷制については未だに根強い恨みが残っているので、分かりやすいでしょう。

 

1670年以降、英国の植民地だったのがジャマイカです。イギリスはアフリカ大陸から劣悪な環境でジャマイカに移送させた黒人住民をコーヒー・砂糖・綿花・タバコなどを栽培するプランテーションで働かせました。当然、経営者は巨額の富を得たわけですが、ジャマイカで奴隷制度が停止されたのは1834年です。なんと160年もの間、奴隷として使役させられたのです。

 

昨年(2021年)、ジャマイカが英国政府に対し、賠償金の支払いを求めていることが報じられました。

 

「私たちの先祖が体験した損害を埋め合わせるため、賠償金という形での正義を達成したいと願っている」

「私たちの祖先は強制的に自国から移動させられ、大英帝国に恩恵をもたらすために強制労働を強いられ、先例がない残虐行為に苦しんだ」

 

ジャマイカのスポーツ・若者・文化大臣オリビア・グランジ氏

 

今年3月になり、ウィリアムとキャサリンはジャマイカを訪れ、イギリスが行ってきた奴隷制について認め謝罪しました。

www.elle.com

「深い悲しみを表明したい。奴隷制度は憎むべきものだ。決してあってはならないものだった」と発言、カリブ海諸国で行われた人身売買にイギリスが関わっていたことを認めた。

 

ベリーズでは抗議行動すら起きました。

www.elle.com

これだけ根強い「イギリス嫌い」が未だに残っているのは、奴隷制度の根の深さを感じずにはいられません。イギリスは奴隷を使って金を稼ぎ、優雅な生活を実現していきました。もちろん、長い年月をかけて賠償金を支払ってきたわけですが、虐げられてきた国に住む人にとっては、遺伝子に刻まれるほど過酷な歴史のはず。

 

直接の受益者であるイギリスに対して未だに辛辣な見方が残っているというところから見ると、エリ女の植民地に対する謝罪や誠意は100%受け入れられてはいないということでしょう。

 

官も民も搾取してきた国 - DE BEERSの奴隷の罠

私は以前、「DE BEERSのダイヤモンドは買うな」と言われたことがあります。石にはパワーが宿ると古来から言われてきましたが、同時に怨念などの負の感情も宿ってしまうそうです。下記は、DE BEERSのダイヤモンド鉱山で使役させられていた黒人奴隷の様子です。

 

2019年12月14日、インマインズ人権団体は、ロンドンのダイヤモンド小売の中心地、New Bond Streetにある世界最大のダイヤモンド企業・DE BEERS Jewellersの前で、同社によるアフリカ人黒人の搾取における汚い秘密を暴露し、同社のダイヤモンドジュエリーとイスラエルのパレスチナにおける戦争犯罪の関連を訴えました。

Source:Boycott Israel News: London Protest Exposes De Beers Blood Diamonds

 

上記から分かるように、イギリスは民から官に至るまで、奴隷制を長年強制させてきました。さらに、DE BEERSの血塗られたダイヤモンド=Blood Diamondは、南アフリカのアパルトヘイトに資金を提供し、今日ではパレスチナのアパルトヘイトに資金を提供しています。つまり、人種隔離政策を実行してきた汚れた資金であり、繰り返しになりますが他国の人種差別をどうこう言える立場には絶対にありません。

 

このあたりの歴史を学んだ方は良く知っていると思いますが、19世紀後半に南アフリカでダイヤモンドが発見された後、創設者であるセシル ローズはロスチャイルド家からの資金提供を受けて、De Beers Consolidated Mines を設立しました。農業に従事してきた現地の黒人を、無理やり働かせたのです。危険を伴う仕事のせいで、毎年5,000人以上のアフリカ人が鉱山で殺されました。それだけではなく、黒人を破産させる法律を可決させ、強制的にダイヤモンド鉱山で働かせる=奴隷使役という所業まで行っているのです。

 

DE BEERSは、ダイヤモンド鉱山で黒人奴隷労働を強制するための強制収容所である「閉鎖労働施設」を設立。アフリカ人は有刺鉄線で囲まれた場所に投獄され、契約が終了するまで毎日14時間の過酷な労働を強いられたのです。ロードス島は黒人の拷問を合法化し、黒人が仕事を辞めることを違法にさえしました。

 

結果、数万人の黒人が過酷な労働環境化で死んだ=殺されたのです。

 

誰かの犠牲の上に成り立つ民主主義など、不要だと思いませんか。他国に内政干渉をするための民主主義など、過去のイギリスの歴史を見れば誰を利益受益者にするためのものかすぐに分かるというものです。既に政治的ツールと化した「民主主義」は、イギリス国民にも見抜かれてます。

 

 

なんと全体の35%が、「以前より民主的ではなくなった」と回答しているのです。米国然り、ですね。

 

エリ女の死は、様々な問題を提起しました。王室の財政はきちんと精査されるべきなのか?イギリス(連邦)は生き残ることができるのか?今なお続く「民主主義」という名の化けの皮はいつ剥がれるのか?私は、この国の政治には自浄作用が備わってないと考えているので悲観的です。