ZUUMA|直感投資と戯言

直感投資家。チャートも見ますが時事ネタ等から直感で動くスタイルです。記事は話半分以下でお読みください。キングダムの考察はnoteで更新中。https://note.com/kazugaga

金融分断のシナリオ

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分析することは好きなのですが、予想めいたことを記事にするのは本来は好きではないので、避けてきました。

 

ただ、今起きている経済分断は金融分断と切り離すことは出来ないと考えているので、触れずにはいられない…という状況です。安全保障的視点で投資を考える時、その内容次第でポートフォリオ・リスク許容度・エクスポージャー、つまりアロケーション戦略が変わるからです。

 

これを見誤ると、利益が取れず損失が拡大します。

 

ということで、どうしても政治~経済~金融を絡めて見通す必要が出てきてしまうため、長文になっております。予めご了承ください。

 

なぜ今首脳会談なのか

マネーは生き物なので、時代に合わせて自らのポリシーをアジャストする必要が出てきます。ポイントになるのは今夜、習近平とバイデンが電話会談することです。

 

japanese.cri.cn

 

バイデンから依頼があったようです。

 

5月利上げ開始を予定している米国で、もしかすると小幅の金融クラッシュがあるかもしれません。そのクラッシュに向けて、米国は「他国のせい」にする準備を開始すると思います。

 

実際に今起きている米国のインフレも、徐々に「ロシアのせい」にされつつあります。米国及び同盟国の民意は、メディア戦略のせいでそのように傾向しています。

 

この動きがスタートしたのも、2月のバイデン・プーチンの首脳会談以降です。ここから、ブリンケン、サリバン、サキが中心となり「対露プロパガンダ」を激しく展開してきました。一方で、米国がロシアに対する工作を続けてきたことに関しては棚上げしています。ロシアをウクライナ侵攻に導いたのは、米国の工作とゼレンスキーの愚かさです。

investmax.hatenablog.com

 

バイデンが何を語るか

このような今までの流れから見て、バイデンは習近平との首脳会談を終えたあとに何らかのメッセージを出すはずです。いや、絶対に出します。その中に以下の言葉があったら投資的には要注意です。

 

「人権侵害」
「懸念」
「新疆ウイグル自治区」
「台湾」
「安全保障」
「サイバー攻撃」
「ロシア制裁」
「不当貿易」

 

基本的に、バイデンが米国式民主主義国家以外の国家と協調路線を歩むことはありません。詳述はしませが、それは彼の今までの政治活動が証明しています。今回も、バイデンから会談を要請しているにも関わらず、中国に対する懸念を表明するというサイコパスぶりを発揮するでしょう。

 

昨年11月の米中首脳テレビ会談では、米国は下記のようなことを言ってます。

 

首脳会談の精神に従って、米国側は新たな冷戦を求めず、中国の体制変更を求めず、同盟国関係を強化して中国に反対することを求めず、「台湾独立」を支持せず、中国との衝突と対抗を望まないなどと述べました。

中米高官のローマ会談 7時間にわたって何を話し合ったのか_中国国際放送局

 

 

もはや、言っていることとやっていることが完全に不一致な国がどこなのか明確に分かる文脈だと思います。中国はこのことを「ダブルスタンダード」と言っているわけですが、多くの日本人も米国政府の言うことには盲目になっているだけなのです。

 

そして今から起きることも「協調」ではなく「分断」です。

 

いずれにしても、世界の覇権は中国が徐々に握ることになります。経済的な強さを増している中国が金融利権・エネルギー利権・経済利権の3つを獲得することになります。つまり、バイデンが容認出来ないことが起きます。協調路線に向かうバイデンがいるとすれば、それは昨日までのバイデンではなく別人のバイデンです。それくらい、突拍子もないことです。

 

中国の停戦仲裁は「基本的」には無い

米国が中国にロシア~ウクライナの停戦仲裁を上から目線で『要請』した場合、中国は「表向きは」断ると思います。中国の、米国に対するスタンスは一貫しています。

 

japanese.cri.cn

 

但し、バイデンとの首脳会談後にドイツやフランス等の首脳と会談が既にセットされていて(今月~4月あたり)、その中で中国に対する仲裁依頼があれば、習近平は動くかもしれません。EUの依頼で動いたという形でEU首脳に花を持たせてやって、EU各国をNATO(米国)から引き剥がす戦略です。

 

この予想が当たるかどうか、見てみましょう。米国政府は自分の国がトップであり続けなければならないという妄想にかられて成り立っていますので、特にバイデンが進めている反中・反露政策は止むことがないでしょう。そして日本は米国と同じことしか言えない弱い政府に成り下がっています(演じているのかもしれませんが)。

 

japanese.cri.cn

 

実現すること、手放すこと

今回、米国主導による対露制裁で米国が実現することは、3つあります。

 

✅インフレの継続
✅米ドル高
✅米国への資金還流

 

長期的に米国が手放すことは、3つあります。

 

✅米ドル覇権
✅エネルギー利権
✅国際的信用

 

 

実現すること:インフレ&米ドル高&資金還流

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(Source:• United States - monthly inflation rate February 2021/22 | Statista

 

 

米国の小売業者約150社が米通商代表部(USTR)に対して、中国企業や製品への関税免除範囲を拡大するよう求めています。米国側が仕掛けた「米中貿易戦争(関税戦争)」によって、米国の対中貿易赤字は減るどころか、逆に2017年の3750億ドルから2021年の3965億ドルに増えているのです。そして今、米国のインフレ率は40年来の高い水準に到達しています。

 

また、ロシアからの石油禁輸は、米国のインフレを加速させます。通常、インフレと通貨安はセットになり経済的にも金融的にも混乱が起きます。それを起こさないために、米国としてはドル高を起こす必要があります。現状は、他国の通貨を相対的に下げることで、米ドル高を演出しています。さらに利上げという形になれば、米ドル買いに繋がるので結果的に米ドルが安くなりません。これが現状です。

 

金融緩和の縮小(テーパリング)によって一時的に金融クラッシュが起きるかもしれませんが、利上げによって長期的にはインフレ資産である株への投資を呼び込み、株価高を演出すると思われます。

 

www.jiji.com

 

手放すこと:米ドル覇権&エネルギー利権&国際的信用

米国がロシアで仕掛けてきたことは、米国が新疆ウイグル自治区で仕掛けてきたことと同じ構図です。つまり資源の強奪とエネルギー利権の確保です。

investmax.hatenablog.com

 

以前も書きましたが、ロシアへの制裁で結果的に苦しむのはEUです。ロシアが石油の輸出を止めてしまえば、EUは困窮することは明らかです。米国はEUにガスを売りたいのかもしれませんが、コストの高い米国産のガスを購入することは家計の負担を増やすだけです。

 

ロシアは中国に輸出すれば良いので、制裁による影響はほとんどない(一時的には大きい)と思われます。プーチンはゼレンスキーと違い賢いので、北京五輪の時(2022年2月4日)に習近平と中露共同声明を発表しています。

 

特定の国が他国に独自の「民主的基準」を課し、民主的基準の遵守レベルを評価する権利を独占し、イデオロギーの根拠に基づいて境界線を引く、排他的なブロックと便利な同盟を確立することを含む、民主主義を無視することに他ならないことを証明し、民主主義の精神と真の価値に反する。このような覇権の試みは、世界および地域の平和と安定に深刻な脅威をもたらし、世界秩序の安定を損なう。

 

参照:中国|中国共産党が「悪」だという時代遅れの善悪二元論を捨てる時 - KAZUMA|直感投資と戯言

 

 

習近平は米ドル覇権に苦しむ国を救うために、矢面に立ってまで原油の人民元決済を実現しようとしています。

www.nikkei.com

 

これが実現すると、米国による制裁戦争が通用しなくなる国が増えます。この動きは、中国が仕向けているわけではなく、米国が自らの行動によって引き起こしていることを理解しておく必要があります。米国が他国に内政干渉すればするほど、自らの覇権を手放すという愚策をやり続けてきました。

 

EUの人々も、「世界が不安定なのは、米国のせいじゃないのか?」と考える人が増えてくると、中国が主導する一帯一路の経済的恩恵にぶら下がったほうが良いと考え始めるでしょう。ロシアによるウクライナ侵攻も、戦争犯罪を積み重ねきた米国を差し置いて、ロシアだけを裁くことが出来ないという矛盾に直面しています。

investmax.hatenablog.com

 

金融分断

面白いことに、このような動きの中、米国は中国株を米国金融市場から締め出そうとしています。本気度は分かりませんが…ワーストシナリオとしては完全な分断です。

 

<考えられる制裁(上場廃止)措置>

①ロシアと取引している企業に対する措置
②対露制裁を課さない中国に対する措置(中国企業全体)

 

当然、中国としては制裁が争いしか生まないことは身を持って知っていますし、法的拘束力もない対露制裁の不支持については何も言われる筋合いもありません。しかし、これが米国です。前述の関税免除を中国に要請した結果、中国が断れば対中制裁という流れを作るでしょう。これをやったら愚策です。

 

ワーストケース:今後、中国企業は米国で上場出来なくなり、既に上場している企業も廃止されるというもの。さらに、米国人が中国企業に投資することを禁止または制限するかもしれません。ワーストの中のワーストとしては、米国企業がファンド等の金融商品の中に中国企業を組み込むことを禁止または制限すること。これは可能性としてはかなり低いと見てますが、可能性として記載しておきます。

 

バイデンとしては、テーパリングで株価が下落したとしても、「中国が悪い」という構図を作り出すことが出来ます。投資家のガス抜きが出来るわけで、その矛先として中国はもってこいなのです。

 

習近平もそこまで想定している雰囲気があります。もちろん、そんな馬鹿げたことは起きないと私も思っていますが、今の米国は何をやるか分かりません。それが民主主義だ!ということになれば、過半数の米国人は従うでしょう。中国企業もワーストケースを想定しているはずで、先日のNIOの香港セカンダリー上場も「万が一」を想定してないとは言えません。

 

これも可能性の話になりますが、中国が米国から依頼された関税免除に従わないことに色々と口実をつけて、中国企業を金融マーケットから一時的or恒久的に締め出すような愚策をやらないとは限りません。

 

実際にはそれに近いことをやり始めています。

www.nikkei.com

 

参考:私が$2台から株を購入してきたNIOも、香港でセカンダリー上場をしました。

investmax.hatenablog.com

NIOは株式市場から資金調達する意味合いが薄いほどキャッシュが潤沢な企業なので、私は政治的な動きが必ずあったと見ています。ある意味、政府に近い企業なので、中国政府としても守るべき企業なのかもしれない…と勝手に想像しています。

 

今回の極端なロシアバッシングも、裏にはジョージ・ソロスがいます。彼がどういうことを言っているのかは、投資家としては注目しなければなりません。

www.business-standard.com

 

まとめますと、金融分断は一時的なもの・部分的なものを含め、起き得ると考えて良いと思います。投資は常にワーストケースを想定して戦略を立てるほうが良いので、中国株(ADR)が今後ダメージを受けないということはないと思っています。

 

もしポジションの組み換えが出来るのであれば、香港でのポジションを増やしつつ、米国のポジションを出来る限り切っていくということも必要になるかもしれません。そこに結びつく動きが、今日の首脳会談以後に少しずつ分かっていくはずです。また、コモディティ価格は一時的にバブルになると見ています。

 

個人的なアロケーション戦略はこのように緻密に考えつつ、本心としては金融分断など起きて欲しくないと願うばかりです。株式市場は、政治イデオロギーの相違に左右されるべきものではありません。経済(企業活動)にリンクして動的であるべきです。もし前者であるのなら、いずれかのイデオロギーに味方する投資はやるべきではない…と思ったりもします。

 

さて、会談の結果やいかに。米中双方の公式発表をじっくり読みたいと思います。会談後の、VIX(恐怖指数)も要ウォッチ。世界が好転することを願います。

 

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