ZUUMA|直感投資と戯言

直感投資家。チャートも見ますが時事ネタ等から直感で動くスタイルです。記事は話半分以下でお読みください。キングダムの考察はnoteで更新中。https://note.com/kazugaga

コラム|中国・31項目の行動計画の狙い

今年7月19日、中国共産党が民間セクターを支援するための31項目の行動計画(Action Plan)を発表したのは皆さんご存じでしょうか。

 

かなり重要に思える濃厚で具体的な行動計画なのですが、日本語メディアでまともに取り上げたところは皆無。遠藤さんが書くかな?と思ったのですが、まだ書いてません。個人的には日本政府よりかなりまともな行動計画だと思ったのですが、少し見ていきましょう。

 

日本語メディアの惨状

これは私が言うまでもなく、日本人が目にする日本語メディアは他国の良いところを正確に切り取ることが出来ません。情弱と言われても仕方ないわけですが、いくつかピックアップしてみます。

 

下記は朝日新聞。

www.asahi.com

 

引用:民間企業の活力を取り戻して課題を解決しようとの意図が透ける。

 

朝日新聞は「意図が透ける」と書いてますが、透けるも何も、民間企業の活力向上を目的としたものなので、言葉選びのセンスがないというか悪意がありますね。透けるどころか、完全に無修正モロ出しです。本当に全部読んだのかな?と疑うほどの言葉選びです。オワッテル。書くなら、「民間企業の活力を向上させるための計画」です。意図が透けるではなく、意図がモロ出し、と書かなくてはならない。

 

下記はブルームバーグ(日本語版)。

www.bloomberg.co.jp

 

引用:中国が締め付けてきた民間セクターを活性化させると表明したが、投資家の反応は鈍い。約2年続いた民間規制と「ゼロコロナ」政策が世界2位の経済大国への信頼をいかに損ねたかを浮き彫りにしている。

 

西側メディアに毒されている投資家連中は置いといて、ゼロコロナ政策は中国の信頼を損ねたのでしょうか?逆に、いち早く経済を立て直し、通常の生活を取り戻した国だと私は認識しているのですが、違うのでしょうか。信頼を損ねたのは、コロナで100万人以上を見殺しにして、さらに他国の紛争に資金・兵器を投入し殺し合いを続けさせている米国ではなかったでしょうか?日本も五十歩百歩。

 

良いところを見よう

批判からは何も生まれませんので、できる限り「良いところ」を見ることが重要です。そこから、中国が向かおうとしている姿がぼんやり見えてくるはず。そういう作業を日本語メディアがやらないので、誰かがやることになってしまいます。私なんて、誰からも報酬をもらえません(笑)。

 

愚痴はさておき、原文を翻訳し、その上で31ポイントの要点をPDFにまとめました。面倒な登録や支払い等は全く不要なので、自由にダウンロードしてください。

 

中国共産党・31ポイントのアクションプラン(日本語・PDF)

※ダウンロードは自由ですが、二次利用・転載はNGとします。

 

メディアや政府が中国の経済政策を真摯に分析するなら、批判で終わるのではなく、どのような「有効な政策」を実施しようとしているのか、またはその進捗度合いなどをチェックしたほうが自分のためになると思うのですが、皆さんはどう思いますか?そこから学ぶ姿勢のほうが、正しいアプローチだと私は信じてます。

 

産業を限定しない全方位成長方針

まず、こういう大々的な発表では支援する「具体的な産業」を述べないようにしているのだと感じます。

 

それを述べてしまうと、米国に狙われて制裁対象になってしまうからです。半導体の二の舞になるのは避けたいというところでしょうね。だから、大枠だけ示して虎視眈々と産業を全方位的に成長させるというスタンスが見えてきます。

 

とは言え、EVは支援し、AIは一部規制する、という大方針は変わらないのだと思います。

 

中国共産党「EVで主導権」「生成AIのリスク予防」…指導部24人が経済方針 : 読売新聞

 

中国は本気

習近平が適当な方針を出すわけがなく(共産党内部の汚職一掃に彼がどれだけ真摯に取り組んだかは真面目な中国人なら知ってる)、今回の行動計画の中で注目したポイントを取り上げてみます。

 

◆ポイント18:国際競争力の向上を推奨

個人的にはここに注目しました。18番目の項目で国際競争力の向上を謳ってるのですが、肝は民間企業の「一帯一路」への積極的な参画を促している点です。

 

先に、私の2年前の過去記事から引用します。

長期(5年以上):実は中国の現在の様々な規制は、この視点で見ることが重要。BRI(Belt and Road Initiative:一帯一路政策)で、中国企業の存在感が増します。その時に、BRIに参画している国は経済が活性化して豊かになり、中国企業に投資しよう、という流れが来ます。その時のために、中国企業はグローバル投資に適した企業である必要があります。中国国内のみならず、BRIに参画する国々から見ても投資に適した企業になっていなければなりません。だからこそ、中国政府は市場競争を妨げるビジネスモデルやビジネス習慣を規制し、清廉潔白な企業運営を奨励する。このフェーズにおいて最も対中国企業の投資が活性化すると考えています。この頃には、米国の帝国主義の化けの皮が剥がれ、世界人口の3分の2に相当する60カ国以上がBRIのプロジェクトに署名したり、関心を示したりしているという効果が最大化するでしょう。

投資|中国株、これからどうする? - ZUUMA|直感投資と戯言

 

投資の長期スタンスとして記載した内容です。青字にした部分が今回の行動計画と合致するだけではなく、ポイント18がまさにドンピシャ合致したのが分かると思います。ポイント18の要点を3つ挙げておきます。

 

  • 「メイド・イン・チャイナ」の評判を高める
  • 民間企業の海外事業拡大を奨励し、「一帯一路」建設に積極的に参加し、海外プロジェクトに整然と参加し、現地の法規を遵守し、社会的責任を果たして海外進出する
  • 貿易保護主義、一国主義、「ロングアーム政策(いわゆる米国の制裁主義)」などの対外的な挑戦の防止と対応において、民間企業により良い指導と支援を提供する

 

これで、中国が何を狙っているかが80%くらいは分かったはずです。中国は産官学連携で真のグローバル企業を生み出そうと考えており、一帯一路のプロジェクトに参画させることで一気にその地位を確立しようとしています。

 

つまり、米国経済圏に依存しない経済圏の確立を本気で狙った行動計画です。この中で、本丸になるのはインフラ(EC・決済・EV充電設備等)になるでしょう。戦争して領土を獲得することよりも、中国と共存共栄したい国にそれらのインフラを提供することのほうが、お互いが豊かになれるということを習近平は知っていますし本気で実行しようとしています。

 

これが実現するときに起きるのが、米ドル覇権の崩壊と米国株の下落です。気づいた時には、中国企業がグローバルシェアを獲得しているという時代が遅かれ早かれ到来するのです。もしかすると海南島は最も重要な拠点の1つになる可能性があります。

investmax.hatenablog.com

 

 

日本政府や日本企業はこの31項目の行動計画を真剣に分析をして、協力できる経済的ボンドを作っていくべきです。日本企業が参画すれば素晴らしい機会になるでしょうし、参画しなければいつまでも米国傘下のブロック経済で、長い目で見ればSinking Sunになるだけです。

 

しかし…我ながら良記事を書いてきたなぁとしみじみ思います。答え合わせをすることで、長期的な視点でビジネスや投資が実践できるわけで、考察をするのであれば生産性の高い考察をしなければならないということを、わが国・日本のメディアで働くどうしようもなく貧弱な思考の方々に問いたいわけです。分かってますよ、お上の方針があるので真相が書けない&言えないことくらいは。消されてきた方々を思えば、想像に難くありません。

 

この件に関してはある程度答え合わせができているので、あとはどういう企業に投資をしていけば良いかを考えるだけですね。新NISAも始まりますし、こういう長期視点で投資先を決めるのは有効だと思います。