いよいよEU各国へ事業展開するNIO(蔚来)が、なんとノルウェー以外ではサブスク型のみで市場参入することになりました。その理由に迫ってみましょう。
サブスク参入の理由を予想してみる
海外の一部のNIOファンも賛否両論で、「説明して欲しい」という書き込みも散見されました。私の予想は2点。①購買層への配慮と②差別化です。
①購買層への配慮については、やはり昨今の物価高。EUにおいては、消費者物価指数が上昇し続けています(下図)。
一括払いや頭金が必要なローンでは購入を尻込みしてしまいがち。より多くの購買層を惹き付けるために、サブスクのみで参入するという戦略は潔いと思います。「貯金はないけど、収入はある」「使う分だけ払いたい」「所有しなくていいからハイクオリティな車に乗ってみたい」という人は増えていくでしょう。
②の差別化ですが、NIOは新興企業&後発組だということを認識しなければなりません。競合となる企業は、既にEUで販売網を構築し納車台数も多い。そこに挑むために、「ウチはサブスクのみですよ」という販売戦略はインパクトがあります。
(画像は著者が作成。実際の注文画面とは異なります)
この2点しか思いつきませんでした。NIOはユーザーエクスペリエンスを重視する企業なので、ユーザーのために何が良いかを考え尽くした結果だと思っています。
「そもそもサブスクって何?」という方のために、モビリティ・ポートフォリオを作成してみましたのでご参考まで。
実際はどうなのか
そんな予想をしていたわけですが、実際にその答えは昨日(2022年10月8日)、すぐに動画で公開されました。
やはり、どこまで行っても「ユーザーの声」で企業戦略を決定する企業だということが分かりました。
NIO Berlin 2022イベントを含め、CNEVPOSTが詳細な記事を書いてましたのでご参照ください。
受け入れられるのか否か
NIOの戦略が上手く行くかどうか…様子を見守るしかないですね。サブスクではなく、所有したい人もいるでしょう。
EUではEVへのシフトが急速に進んでいます。EUの議員も、2035年からガソリン車とディーゼル車の新車販売を事実上禁止する新法案を支持しています。新車購入=EVというレールは敷かれました。
ヒュンダイはインドでの導入に続いて、昨年EUでのサブスクを発表しました。
サブスクプランは、現代の消費者にぴったりです。若い世代は、モノを所有するのではなく、サービスに加入することに慣れています。「使った分だけ支払う」というライフスタイルを確立している、サブスクリプション世代。EVサブスク利用者の平均年齢は、37歳。NIOオーナーで最も多い世代は80年代生まれの方なので、EUでのサブスクが受け入れられないことはないでしょう。
自動車メーカーやアナリストは、2025年に「販売」される新車の20〜30%がカー・サブスクリプションになると予想しています。
日本では若い世代の「車離れ」が進んでいます。サブスク型は、日本のEV市場を活性化する1つの手段かもしれません。
(画像は著者が作成。実際の注文画面とは異なります)
最後に
最後に、サブスクのメリットにフォーカスした比較表を作成したので掲載します。(下図はNIOの購入形態比較ではなく、一般的な比較となります)
「乗る」こと以外の、様々な面倒な点やコストを極力意識しなくて良いのがサブスク型と言えます。「乗る」分だけ支払い、手放したくなったら手放せる。そんな選択肢を消費者に提供するプランですね。
NIOのサブスクの詳細がまだ分からないのですが、永遠にサブスクだけを提供するわけではなく、時期を見て購入プランも提供するようです。ここで投資家が考えなければならないのは、納入台数=売上が従来通りの計算にはならないことです。
この件については別の記事を書きました。
SNSで「納入予定数」 x 「車体単価」を計算し、将来の売上期待値を出している方も見ますが、私がそれをやらないのはNIOの収益源の1つがARR的になるからです。「売り切り」ではなく、サービス化することでオーナーとの関係を長期で継続したい。そんなメッセージが込められているのがEVのサブスクではないでしょうか。
また、サブスク型は代金回収が遅くなるので、EUにおける黒字化への貢献度は低くなると思います。このあたりが会社の売上計画に織り込み済みなのか、織り込み済みでなければどれくらい影響があるのかは、Officialなコメントを待ちましょう。